逮捕は基本的に突然行われます。捜査機関は裁判所から令状を取り寄せるなどの準備をしますが、事前に「〇月〇日にあなたを逮捕します」などという連絡は来ません。そのため、こちらの記事は、犯罪を犯してしまった方だけではなく、逮捕されてしまった方のご家族などもご覧になることを想定して作成しています。
大まかな流れは図の通りです。
逮捕される場合、ある日警察官が家に来て、逮捕状を見せられパトカーで警察署に連れていかれるという流れが多いようです。職場で逮捕ということもあるかもしれませんが職種や業務内容によってはあまりオフィスにいないということもあるでしょうから、定まった住所があればそこで行うのが確実と考えていると思われます。逮捕状は本人には見せる義務がありますが、家族に事細かに説明する義務はありません。仮に本人には身に覚えがあったとしても、家族にとっては何が何だかわからないまま連れていかれてしまいます。現場の警察官が何かしら教えてくれることはあるかもしれませんが、家族による証拠隠滅を警戒する必要がある場合などはこのような親切は期待できないでしょう。
逮捕された後は、事件を担当する警察署に連れていかれます。被疑者(犯罪の疑いをかけられている人です)の住所の最寄りというわけではありません。旅行先などで事件を起こした場合は極端にいえば北海道に住んでいる方が沖縄に連れていかれることもあります。警察署に到着後、取り調べが行われることになります。逮捕後48時間は警察官が取り調べを行い、その後24時間は検察から取り調べを受けます。この72時間の間に検察官が更に長期間身柄を拘束する必要があるかを判断します。その結果、検察官が身柄拘束の必要があると判断し、裁判所が認めた場合は「勾留」という手続きに移行します。逮捕されてから勾留されるまでの間は、原則として面会できるのは弁護士だけです。
勾留されると最大で20日間身柄を拘束されることになります。勾留されると、裁判所が接見を禁止していない限り家族も面会することができるようになります。
この勾留の期間内にも取り調べを行い、検察官が被疑者を起訴するか、不起訴にするかを判断します。検察官が被疑者を起訴する割合は年によって若干の差はありますが刑法に定められている犯罪全体でおおよそ4割弱といったところです。ただし、この数字は身柄拘束を受けない事件をすべて含んでいますし、刑法に定められている犯罪も殺人から器物損壊まで様々ですから、6割は不起訴で終わると安易に考えるべきではありません。
勾留の20日間は何もしないままでいれば外に出ることはできません。身柄拘束からの解放を目指すには弁護士が裁判所に対して、勾留の処分に対する異議を申し立て、それが認められる必要があります。この異議を申し立てる手続きを準抗告と言います。
最終的に検察官が被疑者を起訴するべきと判断すれば、刑事裁判に進むことになります。起訴された時点で身柄を拘束されている場合は、そのまま起訴後勾留という形で身柄拘束が継続します。起訴後の身柄拘束からの解放を目指す手続きは保釈と呼ばれます。
刑事裁判についてはドラマなどでご覧になったことがある方も多いと思います。あのように派手ではありませんが、裁判官、検察官、弁護人、被告人が法廷で行う手続きであるという点では間違っていません。裁判は、事案にも左右されますが、起訴されてから大体1か月前後で第1回期日が行われます。この間に証拠が弁護人に開示され、その内容の検討や訴訟の方針を決める必要がありますので、起訴されてすぐに裁判というわけにもいかないのです。
裁判では、検察官と弁護人がそれぞれ証拠を出したり証人に質問したりして審理を進め、最終的に裁判官が有罪無罪の判断を行います。
今回は、大まかな流れの説明になりましたが、各段階において、接見・準抗告・示談交渉・保釈請求など弁護人でなければできないことがたくさんあります。また、逮捕されてから起訴されるまでは最長でも23日間しかありません。これは逮捕されている本人やご家族にとっては長い時間ですが、実際に身柄の解放や示談に向けて動くにはあまり余裕がある日数ではありません。1日でも早いご依頼が重要になります。ぜひご相談ください。