刑事事件によって身柄拘束されてしまった場合、捜査機関が必要がないと判断しない限り何もしないままでは解放されことはありません。一言で身柄解放といっても手続きの段階や法律上の規定があるかによって成功する割合や金銭の納付の要否などが変わってきます。ここでは取りうる手段をご説明いたします。
勾留は逮捕後に検察官が裁判所に請求し、裁判官が認めれば10日間身柄を拘束する手続きです。勾留が可能となる場合は刑事訴訟法に定めがあり、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったうえで、①住所不定、②証拠隠滅のおそれがあること、③逃亡の恐れがあることのいずれかがあるときに可能となります。そのため、勾留決定がされている場合は裁判官が、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由と①~③のいずれかの事情が存在すると判断していることになります。
そのため、勾留決定に対する準抗告では、これらの事情が存在しないことを主張する必要があります。住所不定を理由とするのであれば身元引受人がいる住所があること、証拠隠滅の恐れがあるのであれば証拠が押収済みであることや被害者と面識がないこと、逃亡の恐れを理由とするのであれば安定した職業と家族がいることなどが考えられます。これが認容されればすぐに身柄が解放されることになります。保釈保証金や身柄解放後の条件は特にありません。基本的に自由に生活することができますが、保釈に比べて認容される割合は低くなります。統計的には準抗告が認容される割合は20%程度です。犯罪の内容や身柄拘束された状況によっても認容の見込みが異なります。
保釈請求は起訴された後に可能になります。裁判所は法律に定められた理由がない限り保釈請求を認めなければなりません。法律上の保釈請求を認めない理由は6つありますが、大まかにいえば①特定の罪で起訴されている場合、②一定の犯罪の前科がある場合、③証拠隠滅の恐れがあること、④住所不定のいずれかに該当している場合です。
また、①~④の事情に該当するとしても、裁判官が逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを考慮して、裁判官の裁量によって保釈を認めることができます。
そのため、保釈請求をする場合は、①~④の事情が存在しないことを主張する必要があります。①は起訴状を見ればわかりますし、②も警察や検察は前科の有無も調べますのでこれも分かります。そのため、主に③・④の事情がないことを主張することになります。
これらの事情は準抗告をする場合でも主張しますが、保釈請求をする段階では、警察・検察の捜査は終了しています。証拠もすべて集め終わっているので、証拠隠滅の可能性は下がります。また、保釈が認められる場合は保釈保証金を納める必要があります。保釈保証金は逃亡などの理由で没収されるため、これにより逃亡の危険も低下します。
そのため、保釈請求が認容される割合は準抗告より高く、全体の30%程度です。
保釈が認められた場合、先ほど触れた保釈保証金を納める必要があります。この金額は本人の収入によって異なります。逃亡すると没収されるため、本人にとって没収されたくない金額に設定します。理論上金額の上限はありませんが、最低でも150万円と言われています。個人的な経験としても150万円を下回ったことはありません。保釈保証金は没収されない限り裁判が終了すれば有罪でも無罪でも返還されます。
また、保釈が認められる際には、生活面で条件が付きます。典型的なものとしては住居制限、逃亡の禁止、被害者との接触禁止、旅行の制限、裁判所からの呼び出しには必ず応じることが挙げられます。これらの条件に違反してしまった場合、保釈が取り消されてしまい再度身柄拘束されてしまったり、保釈保証金を没収されることもあるため注意が必要です。
捜査機関が被疑者を身柄拘束する場合には、逮捕後72時間以内に検察官が裁判所に対して10日間の勾留を請求するという流れで進みます。ここで、裁判所が勾留の必要がないと判断すれば勾留されず、逮捕された72時間で身柄解放されることになります。
しかし、勾留請求自体を却下するよう求める権利は法的には存在せず、事実上裁判所に申し入れることしかできないことや、逮捕されてから勾留が認められるまでの最長72時間しか裁判所への働きかけができないこともあって、勾留請求が却下される割合は5%以下であるのが実情です。
身柄拘束からの解放を目指す方法は手続きの段階によって異なります。刑事事件はスピーディーに進むため、時間が過ぎるほどできることが減っていきます。身柄解放だけではなく、取り調べの対応なども可能ですのでお問い合わせください。