家族が逮捕されてしまった場合、一刻も早く戻ってきてほしいと心配されている方は多いと思います。ここでは釈放されるために起訴される前から可能な準抗告という手続きについて説明します。
刑事事件の被疑者として逮捕されると、逮捕後に最長72時間以内に身柄拘束を受け、その間に検察官が更に身柄拘束が必要と考えた場合に裁判官に対して勾留を請求します。請求を受けた裁判官の許可により勾留による身柄拘束に移行します。勾留は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったうえで、①住所不定、②証拠隠滅のおそれがあること、③逃亡の恐れがあることといった3つの事情の少なくとも1つがあるときに許可されます。
勾留を受けると、原則として10日間の身柄拘束が続き、それでも捜査が終了しないなどの理由で身柄拘束が必要と判断すると、延長請求によってさらに最大10日間勾留延長が許可されます。そのため、勾留期間は最大20日間逮捕されてからであれば最大23日にわたります。
23日間行方不明になれば会社員であれば解雇されるでしょうし、自営業であったとしてもお仕事に大きな悪影響が及ぶでしょう。その他家族の世話など人によって様々な不利益が生じます。
裁判官が下した勾留許可の決定を覆すための手段が「準抗告」です。準抗告が認められると、勾留の効果が否定され、釈放されることになります。準抗告によって釈放された場合、捜査が終了しているわけではありませんが、いわゆる在宅捜査へと切り替えられ、時折呼び出しをを受け取り調べを受けることはあっても普段通りの社会生活を送ることができます。
準抗告で主張する内容
上記の通り、勾留は罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由に加えて証拠隠滅等の事情が少なくとも一つ認められると裁判官が判断した結果許可されます。そのため、準抗告の際には、これらの事情がないことを示す必要があります。
住所不定が理由となる場合は逮捕時に路上生活者であったなど限定的ではありますが、身元引受人を用意することが一般的です。また、身元引受人は逃亡や罪証隠滅のおそれを低下させる意味がありますので、可能な限り用意したいところです。
罪証隠滅や逃亡のおそれを理由とする勾留に対する準抗告のために主張するべき内容は事件の内容によりますが、一般的には証拠がすでに押収されていることや、被害者と面識がないこと、共犯者がいないこと、執行猶予判決が見込まれること、扶養家族がいることなどが考えられます。
準抗告が認容されるとどうなるか
準抗告が認容されると、直ちに身柄が釈放されます。遠方の警察署でありその日のうちに帰宅できない状態でも釈放されてしまうので、身元引受人がいれば迎えに行けるかどうかという調整も必要になります。
釈放されたとしても捜査は終了していないので、呼び出しを受けて取り調べを受けることはあります。しかし、それ以外は自由に社会生活を送ることができます。
準抗告が認容される割合は統計上20%程度であり、高いとは言えませんが、犯罪の内容や本人の状況によっては適切な主張によって可能性を高めることが可能です。また、準抗告が失敗するとしても、却下の理由書によってこちらが知らない事情を知ることも可能になる場合があります。準抗告は弁護士でなければ難しく、被疑者にとって身柄の解放は重要な権利です。一度ご相談ください。