犯罪を犯してしまったときに何とか不起訴で終わらせたいと考える方がほとんどです。ここでは不起訴の6割から7割を占めている起訴猶予処分について説明します。
起訴猶予は、刑事事件において、犯罪の嫌疑が十分に認められながらも、検察官の判断で訴追の必要がないと考えられる場合に、起訴をしない処分のことです。つまり、犯罪の証拠があるにもかかわらず、被疑者の性格・年齢及び境遇・犯罪の軽重・情状・犯罪後の状況を考慮して刑事裁判による処罰を受ける必要がないと判断されたケースで用いられます。
検察官は、すべての刑事事件を起訴しているわけではなく、刑事訴訟法は検察官の判断において必要性を選別して起訴すればよいという起訴便宜主義を採用しています。起訴便宜主義は、刑事処罰は国家として最後の手段でなければならないという刑法の謙抑性に合致しているほか、被疑者本人や裁判所も併せた関係各所の負担の軽減というメリットがあると考えられています。
前科はつかないが記録が残る: 裁判所に起訴されて有罪判決を受けると前科が付きますが、起訴猶予の場合は前科はつきません。ただし、捜査機関の捜査対象になったことが前歴となります。起訴猶予は犯罪を犯したこと自体は明白であることが前提になりますので、以後何らかの犯罪に及んでしまった場合、不利益に働く可能性が高くなります。
刑事手続が終了する:不起訴によって手続きが終了した場合、今後その件によって警察や検察、裁判所に呼び出されることは基本的になくなります。新しい証拠が出てきた場合に呼び出しを受けるという可能性はありますが、捜査は一旦終了するので新証拠が出てくることは少なく、一般論としては可能性は低いでしょう。
上記の通り、起訴猶予は被疑者の性格・年齢及び境遇・犯罪の軽重・情状・犯罪後の状況を考慮したうえでなされます。これらの要素は厳密に分類できなかったり、後から変えられない場合はありますがこれに従っていくつか一般的な方法が考えられます。
被害者と示談する: 犯罪事実を認める場合、被害者との示談が有効です。示談が成立した結果、別途刑事裁判により処罰する必要はないと判断されることは少なくありませんし、仮に起訴されたとしても実刑判決を免れる可能性が高くなります。
反省の意思を示す:被害者がいない犯罪や示談ができない場合、反省の意思を示すことが重要です。具体的な方法としては反省文の作成が考えられます。
再犯防止策をたてる: 犯罪を繰り返さないための対策を考ることも重要です。犯罪事実の性質上具体的な方策を立てられないこともありますが、例えば交通事故については運転免許を返納するなどが考えられます。
身元引受人を用意する:身元引受人の有無の有効性はそれまでの生活状況や年齢などにも左右されますが、生活状況を変化させることで再発防止の一助にもなると示すことができれば起訴猶予の方向で考慮されることもあります。
起訴猶予を目指すためにできることがあるかはどうしても事件の性質に左右されます。家族が逮捕されてしまった方や、警察から呼び出しを受けている方は一度ご相談ください。